突然ですが、「生涯収支」という言葉をご存知でしょうか?
生涯収支は、生まれてから亡くなるまでに受け取る収入(給料・ボーナスなど)から、一生でかかる費用を差し引いたものです。
もしも、この生涯収支がマイナスになる、お金が足りなくなる予測結果であった場合、なんらかの対策(収入を増やすか、支出を減らすか)を取らないと、人生のどこかで行き詰まってしまいます。
今回は、平均的なケースでは生涯収支がどのくらいになるのか、試算してみたいと思います。
この記事が、皆さんの人生設計や投資活動に何か参考になれば、嬉しいです。
モデルケース
生涯収支を具体的に計算するにあたって、山田さん一家を想定します。
山田太郎さんは、大学卒業後、都内の中堅企業に勤務。
社会人になってから互いの存在を意識するようになった、大学の同級生の花子さんと、就職してから5年後(27歳)に結婚しました。結婚した時にマンションを購入し、一家で東京に住んでいます。
花子さんも、大学卒業後働いていましたが、結婚を機に退職して、花子さんは専業主婦になりました。
結婚2年後(29歳)に1人目の子どもが生まれました。子どもは年子で2人(2人目出産時30歳)、春男くんと夏子さんを授かり、4人家族です。子どもたちは、2人とも大学まで卒業しました。
上記のような家族を想定し、生涯収支を試算してみます。
老後が何歳からかは考え方がいろいろあると思いますが、とりあえず現役時代と老後を60歳を境にして分けて考えます。
生涯収入(60歳まで)
下記の統計によれば、大卒男性の生涯賃金は2億8,800万円(※)です。
なお、日本の統計上ではまだ男女の賃金格差が大きいので、大卒男性の数字を抽出しています。
※大学卒業後ただちに就職、60歳で退職するまでフルタイムの正社員を続け、退職金を得る場合
※出所:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2021(労働統計加工指標集)」
⇒統計上、生涯賃金2億8,800万円の内訳は、60歳までの賃金が2億6,900万円、退職金が1,900万円。
上記数字に基づくと、大卒後22歳から60歳まで38年間ありますから、2億6,900万円/38年=平均して年収約700万円になります。
⇒なんだか感覚的には少し高いような気もしますが、まあまあ妥当なところではないでしょうか。
よって、ここでは、山田太郎さんの生涯収入の数字は、この「2億8,800万円」(38年間分の給与・ボーナスと退職金の合計)を使います。
⇒なお、妻の花子さんは、結婚を機に退職している設定ですので、山田さん一家における花子さんの収入は、とりあえずゼロで計算しています。
生涯支出
生涯支出には、所得税などの税金や社会保険料、日常生活費、そして人生の3大支出と言われる「住宅費用・教育費用・老後費用」があります。
●税金・社会保険料
太郎さんが受け取る給料・ボーナスからは、所得税や住民税、社会保険料(年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料など)が差し引かれます。
上記の生涯年収の設定では、大学卒業後60歳までの38年間を平均した時の平均年収は700万円です。
年収700万円にかかる税金と社会保険料の合計は、大体25%になります。
つまり、年収700万円から差し引かれた後の手取り額は75%=525万円、税金と社会保険料は計25%=175万円です。
税金と社会保険料の合計は1年で175万円ですから、60歳までの38年間では、
175万円×38年=「6,650万円」を支払うことになります。
●日常生活費
山田さん一家は4人家族で平均年収700万円、手取り年収525万円の想定なので、月額平均手取り収入は約44万円です。
この場合の家計(4人分)の支出イメージを下記のように想定します。
・月額支出合計→44万円
住居費:15
水道光熱費:3
通信費:3
食費:9
教育費:5
その他(衣服費・交際費・娯楽費・医療費・生命保険料・小遣いなど):7
貯金:2
⇒上記は、大体このくらいかなあというイメージを掴むためのものです。
大学卒業から60歳までの38年間は、厳密には、太郎さんや花子さんが独身の期間や、子どもがまだ小さくて費用が相対的に低い時期も含まれますが、平均したら、ざっくりと上記のような感じかなというイメージです。
住居費と教育費は、以下の別項目で扱いますので、ここで扱う毎日の日常生活費からは除外します。また、貯金も費用ではないため除きます。
日常生活費=水道光熱費3+通信費3+食費9+その他7=月額22万円
⇒住居費と教育費を除いた、日常生活費の合計が4人で月額22万円(=1人当たり月額約5万円)なので、多いとか少ないとかの異論はあるでしょうが、まあまあいい線の金額かと思います。
⇒日常生活費が月額22万円なので、60歳までの38年間では、
月額22万円×12か月×38年=「約1億円」
なお、山田さん一家の下の子、夏子さんが生まれたのは、太郎さんと花子さんが30歳の時ですから、夏子さんが大学を卒業して就職するのは、山田夫婦が52歳の時です。
そこから60歳までの8年間は夫婦2人の日常生活費でよいので、上記の22万円より安くなると思われます。
しかし、逆に、春男くんと夏子さんが、中学・高校・大学の期間は、日常生活費も上記22万円より高くなると考えられる(今までの貯金を取り崩す)ので、プラスマイナスを相殺して、ざっくりと月額22万円が38年分かかるとして計算しています。
●住宅費用
山田さん一家は、結婚を機に、家族4人で住む3LDKのマンションを東京で購入する想定です。
23区内はあきらめ、東京都下の市部で4,000万円の中古マンションを購入することとします。
4,000万円のマンションを30年ローンで買うと、利息も含めた総支払額は、諸費用も込みで5,500万円以上にはなります。
これに、独身の間の5年間の住居費約500万円(月額家賃8万円×12か月×5年)を足して、合計「6,000万円」を住宅費用として想定します。
●教育費用
山田さん一家の子どもたち、春男くんと夏子さんは、2人とも大学を卒業しました。
春男くん:小学校から高校まで公立、大学は私立
夏子さん:小学校は公立、中・高・大学は私立
このようなケースで、教育費がいくらかかるか試算します。
試算には、下記の表を使用しました。
※出所:LikeU by 三井住友カード
⇒上表に基づく試算の結果、春男くんは小学校から大学までの合計で約870万円、夏子さんは合計1,300万円の教育費になります。
2人を合わせると、教育費は合計「2,170万円」です。
なお、これは自宅から通学する場合なので、遠距離の大学に通う場合は、別途下宿代などが必要になります。
●老後費用
日本年金機構のHPによると、厚生年金(会社員)の場合、夫婦2人で月額約22万円(※)の年金が65歳から受け取れます。
※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準。
山田さんの設定平均報酬は上記より少し高いですが、年金は毎年のように減額されてますから、ここでは山田さん夫婦の将来の年金受取り額は月額20万円とします。
これでも結構多い方ではないかと思います。
ただ、年金が夫婦2人月額20万円では心細いですね。
老後を豊かに暮らしたいなら、夫婦2人で少なくとも月額30万円は欲しいところです。つまり、あとプラス月額10万円が必要になります。
山田さん夫婦が80歳まで生きるとしたら、60歳で退職した後、老後に年金で足りない費用は、
60歳~65歳の5年間(年金無しの期間):月額30万円×12か月×5年=1,800万円
65歳~80歳の15年間:月額10万円×12か月×15年=1,800万円
ですので、老後の20年でかかる費用は、合計「3,600万円」です。
生涯収支の試算結果
上記をまとめますと、以下の通りです。
★生涯収入(60歳まで)の合計:2億8,800万円
★生涯支出の合計:2億8,420万円
[内訳]
・税金・社会保険料:6,650万円
・日常生活費:1億円
・住宅費用:6,000万円
・教育費用:2,170万円
・老後費用(年金差し引き後の不足分):3,600万円
★生涯収支=生涯収入2億8,800万円-生涯支出2億8,420万円=380万円のプラス
⇒山田さん一家について、大学卒業後22歳から80歳で亡くなるまでの58年間の生涯収支は、なんとかプラスという結果になりました。
ただし、58年で380万円ですから、380万円/58年=年額65,000円=月額5,500円 の余裕資金にしかなりません。
上記の費用想定も、結構カツカツで余裕がないため、想定外の出費が少しでもあると、簡単に生涯収支がマイナスに転落する危うい状況です。80歳以上に長生きする可能性もあります。
しかも、今後、インフレによる物価の上昇や、消費税率・社会保険料のアップなどによって、生涯支出の増加は、ほぼ確実に見込まれる一方、給料や退職金は頭打ちの傾向が予想されます。生涯収支は、かなり厳しいです。
生涯収支を改善するための対策
このままでは非常に危うい、山田さん一家の生涯収支を改善するためには、どうすればよいでしょうか?
対策には、生涯収入を増やすか生涯支出を減らす、もしくはその両方を行います。
●生涯収入を増やす
①給料を増やす→本業を頑張って昇給、または転職
②副業をする
③太郎さんが60歳以降も働く
④専業主婦を辞めて、花子さんも働く
⑤投資をすることで、配当金や株式売却益を得る
⇒健康面や家庭の事情が許せば、③④が現実的で即効性がある対策になりそうです。
⇒私のおススメの対策は⑤。特に、高配当株への投資でコツコツと受取り配当金を積み上げていくことです。
●生涯支出を減らす
⑥毎月の固定費を削減する
⇒毎月かかる通信費や生命保険料、住宅費用などの固定費を削減します。具体的な方法については下記をご参照ください。
まとめ
これは、あくまでも山田さん一家に関するざっくりとした生涯収支の試算ですが、かなり厳しい状況ですね。
あなた自身の生涯収支が足りているかどうか、余裕はあるのかどうか、具体的に一度試算してみることも、おススメです。
(なお、実際の試算では、現時点から先の将来分だけを計算すればOKです)
生涯収支を一度試算しておくと、何年後までに、どのくらいのお金を用意しておけば良いかが分かるので、計画的な準備と心構えができます。
※生涯収支(=ライフプラン)は、FPに作成してもらうこともできます。
FP(ファイナンシャルプランナー)は、ライフプラン作成の専門家です。
あのリクルートが運営する「保険チャンネル」のサイトから、FPに ”無料で” 相談し、ライフプランを作成してもらえます。
オンラインでも相談可能な点が嬉しいところです。
これからの時代、生涯収支はますます厳しくなっていくと予想されます。
だからこそ、高配当株に投資することで、生涯にわたって受け取る配当金をコツコツ増やしていこうと考えています。
今日も配当生活への道を一歩ずつ進む、ショウでした!
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