※本記事は、2024年版に更新しました。下記【2024年版】をご参照ください。
INPEXの2022年12月期本決算の発表がありましたので、2023年版の内容に更新しました。
1605INPEXは、高配当株の一つであり、私も現在保有しています。
INPEXは、もともと国際石油開発帝石という社名でしたが、2021年4月1日付で、現在の社名に変更しました。
本ブログに書きました、高配当株買いの4つの基準に照らして、INPEXを検討します。
基準1.配当利回りが3%以上(税引前)
INPEXの予想配当利回りは約4.6%の高さ。基準1はクリアです。
基準2.直近5年以上、増配傾向が続いていること(最低でも前年の配当金額を維持していること)
INPEXの配当金の推移
2019年3月期:24円(前年比33%増)
2019年12月期:30円(前年比25%増)※決算期変更のため9か月決算
2020年12月期:24円(前年比20%マイナス)
2021年12月期:48円(前年比2倍)
2022年12月期:62円(前年比29%増)
2023年12月期予想:74円(前年比19%増)
INPEXは、直近5年で大きな流れとしては増配傾向にありますが、20/12期は原油価格の下落や減損損失計上により、減配しています。
上記のように、INPEXは、原油・天然ガスの開発生産という事業の性質上、原油価格の影響を大きく受けますが、2022年2月9日に以下のような株主還元方針を発表しました。
●INPEXの株主還元方針
「安定的な配当を基本としつつ、業績の成長に応じて、株主還元を強化する」
・総還元性向は40%以上を目途とする。
・事業環境、財務体質、経営状況等を踏まえ、自己株式取得を実施する。
・短期的に事業環境等が悪化した場合でも、1株当たり年間配当金の下限を30円とする。
⇒配当金の下限保証を行う配当方針は、なかなかユニークでありがたいものです。
下限保証の意味は、その年の業績が悪くても、最低でも年間配当30円は支払う。もし業績が良ければ、30円に上乗せして年間配当を40円や50円などにする、ということです。
例えば、INPEXの株式を株価1,400円で買ったとします。
すると、下限保証の配当金30円での配当利回りは、年間配当金30円/株価1,400円=2.1% になります。
INPEXは、どんなに少なくても年間配当金は30円を支払うと言っているわけですから、上記の例のように株価1,400円で買った場合、今後取得価格ベースでの配当利回り2.1%以上は保証されることになります。
年間配当の下限の金額=最低でもこれだけは配当をもらえるという金額 を会社が宣言しているので、株主から見れば、ありがたいことです。
ただし、対外的に発表した以上、簡単に変更はしないと考えられますが、上記の配当方針を変更しないかどうか、ウォッチしておく必要はあります。
INPEX経営陣の株主還元・配当への意識は非常に高く、上記を総合的に判断して、基準2もクリアとします。
なお、INPEXは、株主優待として、所有株式数(400株以上)と保有年数(1年以上)に応じて、QUOカード(1,000円~5,000円)の株主への贈呈も実施しています。
コンビニなどで使えるQUOカードは、株主優待で届くと結構嬉しいです。
詳細はINPEXのHPご参照。
基準3.倒産リスクがほぼ無いと考えられること
INPEXは、売上高2兆円以上、時価総額1兆9千億円以上、日経平均225銘柄の一つであり、倒産リスクは限りなく低いと想定されます。
なお、INPEXは、日本政府がその20%を所有する大株主になっていて、国はいわゆる黄金株も所有しています。
株主総会において、合併などの一定の重要事項の決議を行うには、持株比率に関係なく、黄金株の所有者の賛成が必要となります。
よって、黄金株を所有している日本政府は、重要事項に関する拒否権を有することとなり、INPEXを敵対的買収の対象にするのは非常に困難です。
これは、INPEXが、原油・天然ガスという重要なエネルギーに関する国策会社の側面も持っていることから来ています。INPEXは、日本政府にとっても大事な会社です。
基準4.業績が好調または堅調であること
INPEXは、日本最大の原油・天然ガスの開発企業です。
INPEXは、原油・天然ガスの供給によって、世界のエネルギー需要を満たすとともに、近年の地球温暖化問題・脱炭素社会への移行に対応する事業(ネットゼロ5分野)の育成も進めています。
ネットゼロ5分野は、ネットゼロカーボン社会(二酸化炭素ゼロ)への移行に向けた5つの事業です。
すなわち、①水素・アンモニア事業 ②CCUS事業(二酸化炭素回収・有効利用・貯留) ③再生可能エネルギー事業 ④カーボンリサイクル・新分野事業 ⑤森林保全事業 の5つで、今後の事業成長が期待されています。
原油・天然ガスの開発では、アジア、中東、オセアニア、欧州、アメリカなど世界中の鉱区の取得から探鉱、生産、販売まで行います。
探す→掘る→生産→運ぶ という4つの工程を手がけます。
地質調査、物理探査、掘削、精製、海上輸送・パイプラインなど、様々な専門技術が必要であり、他社が簡単に参入できる事業ではありません。参入障壁が非常に高い事業です。
INPEXの売上高は、全体の売上高のうち、原油関連が7割以上、天然ガス関連が2割以上を占めています。
よって、その事業の性質上、INPEXの業績は原油と天然ガスの市況価格に大きな影響を受けます。
この点をカバーするために、株主還元の面では上記の基準2に記載したように、INPEXは、業績が一時的に下がった場合でも、配当金の下限保証を行うことを公約しています。
逆に、原油・天然ガスなどの資源価格が大幅に上昇する場合、INPEXは大きな利益を得ることができます。
近年は、脱炭素社会の実現が叫ばれる中で、CO2を排出する化石燃料である原油・天然ガスの需要は、将来にわたって少しずつ縮小すると見込まれています。
しかし、原油の用途は、熱源(火力発電所、暖房等)、動力源(自動車、飛行機、船舶等の燃料)、原料(プラスチック、化学繊維等)など、多岐にわたります。
そのため、CO2削減と言っても、これらの用途に使われている原油を一気になくすことは、技術的にも経済的にも不可能です。
例えば、ガソリン車から電気自動車EVにシフトすれば、原油を減らせるような気がしますが、代わりにこれまで以上に電気が必要になります。そのEVを動かす電気は、どうやって作っているのでしょうか。それは、石炭・原油・天然ガスによる火力発電がメインです。
もちろん、火力発電が100%ではなく、各国政府も再生可能エネルギーの割合を増やそうとしていますが、再エネは太陽光・風力など、自然状況に発電量が左右される不安定なものです。
よって、火力発電による電力の安定供給・バックアップが必要となります。
また、天然ガスは、化石燃料の中でもCO2排出量が少なく、環境に優しいエネルギーです。そのため、脱炭素社会への移行期には、天然ガスへの高い需要が見込まれます。
このような情勢の中で、原油・天然ガスは、世界的にまだまだ必要な状況が続きます。
加えて、上記の通り、INPEXはネットゼロ5分野の事業に注力しており、同社の技術力を応用して、再エネやCCUSなど脱炭素に関する事業への取り組みも積極的に進めています。
2023年2月9日、INPEXは22/12期の本決算を発表しました。
・22/12期は、大幅な増収増益決算で、純利益は前期比約2倍の増益。
・22/12期の配当を62円に増配(21/12期配当48円)
・今期23/12期は、原油価格の下落を想定しており、純利益は前期比マイナス38%の減益予想。
・ただし、23/12期の配当予想は64円と増配予想を出している。
⇒前期22/12期と今期23/12期のダブル増配の発表です。
この積極的な株主還元姿勢は素晴らしいです。一時的な原油価格の上下動があっても、継続的な株主還元を実施できる財務基盤をINPEXは持っています。
⇒今期23/12期の業績は原油価格の下落による減益予想となっていますが、この業績予想の前提条件は、INPEXの決算説明資料によると、下記の通りです。
・ブレント原油価格:75ドル/バレル
・為替レート:125円/ドル
ブレント原油価格が高いほど、為替レートが円安であるほど、INPEXの業績にはプラス影響があります。
そして、今期23/12期が始まって既に1か月が経過していますが、2023年2月10日現在、ブレント原油価格は85ドル/バレル、為替レートは130円/ドルです。
よって、現在の市況は、上記の業績予想の前提条件を、INPEX業績に有利な方向で上回って推移しています。
⇒その後、2023年5月10日の23/12期第1四半期決算発表において、INPEXは、通期業績予想を上方修正するとともに、原油価格と為替の前提条件を以下のように修正しました。
・ブレント原油価格:80ドル/バレル
・為替レート:130円/ドル
2023年6月21日に、INPEX株式に関して、オービス・インベストメント(投資ファンド)が大量保有報告書(変更報告書)を提出しました。
・オービスのINPEX株式の保有比率は5.34%
・保有目的に「状況に応じて重要提案行為等を行うこと」を追加
⇒今後、INPEX経営陣に対し、オービスが、「重要提案行為」として、経営戦略や配当方針の変更、大幅増配、自社株買いなどを要求する可能性があります。
これらの要求が、INPEXの企業価値にとってプラスになるかどうかはケースバイケースですが、一般的には、INPEX株価の上昇につながります。
今後の動向を見守りたいと思います。
2023年6月27日の日経記事において、INPEXの財務担当役員である山田取締役が以下のように述べています。
「(今期23/12期の)業績は想定通りでも株主還元を約350億円上積みする余地がある」
⇒追加の株主還元350億円ということは、INPEXの株数は約13億株ですので、全額配当に充当したと想定した場合、配当約26円分に相当します。
現在の23/12期の配当予想は64円ですから、ここから26円増配したら配当は90円となり、64円からは1.4倍の大幅増配になります。
350億円のうち、配当と自社株買いにそれぞれどれだけ充当するかは不明ですが、上記のように、追加還元350億円はかなりインパクトのある金額です。
この件については、早ければ、2023年8月上旬の23/12期中間決算の発表において、何らかの開示があると考えられます。楽しみに待ちたいと思います。
⇒その後、INPEXは、2023年8月9日の23/12期中間決算発表において、通期業績予想の上方修正・増配(64円→74円)・自社株買い(1,000億円)を発表しました。
今後の市況動向次第では、INPEXの好業績とそれに伴う追加増配の可能性も考えられます。
もちろん、原油価格などの市況が悪化すれば、逆の可能性もありますが、配当金30円の下限保証がありますので、配当金は30円を下回ることはありません。
原油価格や天然ガス価格が上がると、ガソリン代・電気代その他の物価も上昇し、生活費が上がるため、私たちの暮らしを直撃します。
けれども、原油価格の上昇はINPEXの業績には有利ですから、株主も恩恵を受けられます。
ですので、INPEXの株式を持っておけば、このような資源価格の上昇・物価インフレに対応することができます。この点でも、INPEXへの投資は魅力的です。
INPEXの業績の数字には、原油と天然ガスの市場価格の変動によって、年によりアップダウンがありますが、業界首位の会社として、おおむね業績は堅調で、配当を維持できなくなるほど大きく悪化することはないと考えています。
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結 論
以上を総合的に考慮し、高配当株として、INPEXは買いと判断しています。
特に、配当金の下限保証かつ業績好調時には大きな増配も見込める点と、INPEX株式を保有することで資源価格のインフレに対応できる点が、非常に魅力的です。
(原油・天然ガスの資源価格が上がれば、同社の業績もアップし、同社株価も配当も増える。逆に業績が下がった場合は配当金の下限保証がある)
今日も配当生活への道を一歩ずつ進む、ショウでした!
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