「投資をするよりも、まずは本業の年収を高めるべきだ。」
よくこういう話を聞きます。
基本的には正論だと思いますが、これを真に受け、または誤解して、本業だけに全注力し、投資を全くしないまま何年も何十年も経ってしまったら、後悔することになりかねません。
投資も本業も、両方がんばるのが良いと思います。
そして、投資と本業のどちらにどれくらいの力を入れるのか・配分するのかで、将来が違ってきます。
投資:本業=5:5にするのか、1:9で本業に労力も時間も集中するのか、それとも7:3くらいで本業は給料分は働き定時退社し、投資活動に注力するのか、などなど。
もちろん、どのような配分にするかは、個人個人の環境・能力・人間関係・やりがいなどで、最適解は異なります。
ただ、これらの配分を決めるにあたって、そもそも “本業で” どれくらいの金銭的リターンが見込めるのか、どの辺が稼ぎの天井になってくるのか、理解しておくことは重要です。
本業が自営業や起業家、オーナー経営者だと、事情が大きく異なるので、以下では、本業がサラリーマンの場合を想定します。
サラリーマンが本業に注力し、実力に運も伴い、出世を重ねていった場合、どのくらいの年収が得られるのでしょうか?
今回は、サラリーマンの年収の現実について、考えてみました。
年収1億円以上の経営者(取締役)
本業であるサラリーマンの仕事に注力して金銭的リターンを得ることを想定する場合、その頂点は、社長・役員です。
サラリーマンの頂点である社長になった場合、どれくらいの年収を得られるのでしょうか。
法律上、役員報酬が年1億円以上の場合、有価証券報告書で開示が義務付けられているため、公開データがありますので、それを見ていきたいと思います。
役員は、取締役・執行役・執行役員・監査役などを総称する言葉ですが、一般的に、取締役が一番役員報酬は高いです。社長も取締役の中から選ばれます。
【東京商工リサーチの調査結果(各社の有価証券報告書に基づく)】
・調査対象:2022年3月期に本決算を迎えた上場企業2,355社
・年1億円以上の役員報酬を開示した会社:287社
・年1億円以上の役員報酬を開示した役員の合計人数:663人
⇒年収1億円以上の役員がいる会社数の割合は、287社÷2,355社=12.2%
逆に言えば、約88%の上場企業は、たとえ社長でも年収1億円以下であるということになります。
⇒取締役の人数が、平均して1社当り10人と仮定すると、調査対象企業数が2,355社なので、取締役の人数は合計で23,550人の計算になります。
そして、年収1億円以上と開示した役員の人数が663人ですから、人数での割合は、663人÷23,550人=2.8%
⇒ざっくりとした計算ですが、上場企業の取締役のうち、年収1億円以上の人は約3%であると推定されます。
この結果から、たとえ上場企業の取締役であっても、年収1億円以上もらっている人はレアケースであって、3%程度しかいないと考えられます。
3%程度という数値は推定ですが、年収1億円以上はごく一部の少数派であるという理解で合っているのではないかと思います。
続いて、役員報酬ランキングのトップ50を見てみます。
※出所:東洋経済ONLINE
⇒役員報酬のトップは、Zホールディングス(ヤフー・LINEの持株会社)取締役の43億円です!
上位には外国人の方が、多く見受けられます。
やはり、外資系企業と競争して優秀な外国人経営者を引っ張ってくるには、それなりに高額の役員報酬が必要になると考えられます。その他、創業者系の人も高くなっているようです。
⇒通常の日本企業の水準だと、三菱商事会長の7.8億円、トヨタ自動車社長の6.8億円、伊藤忠商事社長の6.7億円くらいが、トップの水準という感覚でしょうか。
⇒なので、ざっくり言うと、上場企業のうちトップクラスで、だいたい年収5億円程度かなと推定されます。
⇒上場企業と言っても、上は売上高10兆円以上から下は売上高10億円程度まで、様々です。
あくまで上記の年収5億円程度は、上場企業の中でもトップクラスの場合と考えられます。
そもそも、年収1億円以上の開示データから推定したように、上場企業全ての取締役のうち年収1億円以上なのは3%程度です。
逆に言えば、残りの97%の取締役は、年収1億円以下ということになります。
よって、上場企業のトップ(社長・会長)であっても、年収1億円以下の人はたくさんいる、もっと言うと、たとえ上場企業の社長でも、大多数のケースでは年収1億円以下だと推定されます。
⇒これらを総合すると、通常の日本企業の場合、日本トップクラスだと、年収5億円程度が期待できます。ただし、上記のように、大多数の会社では、社長であっても年収1億円以下(数千万円)だと推定されます。
(例えば、社長が年収7千万円なら、専務が4千万円、平の取締役が2千万円、部長1,500万円くらいでしょうか。)
額面と手取り年収
年収●●万円と言う時は、額面ベースの場合が多いですが、実際に自分の手元に残るお金は手取りベースなので、手取り年収がどれくらいになるか把握しておく必要があります。
給料・ボーナスの額面分から、税金(所得税・住民税など)と社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料など)が、源泉徴収で差し引かれます。
私たちの手元に残るのは、差し引かれた後の手取り給料・ボーナスです。
そして、日本の制度は累進課税制度であり、基本的には、年収が高くなればなるほど、税金・社会保険料の負担割合が増えていきます。
以下は、額面年収が●●万円なら、手取り年収がいくらになるかの概算になります。
※出所:酒居会計事務所HP
額面300万円 → 手取り236万円(税・社会保険の負担率21%)
額面400万円 → 手取り312万円(負担率22%)
額面500万円 → 手取り387万円(負担率23%)
額面600万円 → 手取り458万円(負担率24%)
額面700万円 → 手取り525万円(負担率25%)
額面800万円 → 手取り588万円(負担率26%)
額面900万円 → 手取り656万円(負担率27%)
額面1,000万円 → 手取り721万円(負担率28%)
額面1,200万円 → 手取り849万円(負担率29%)
額面1,500万円 → 手取り1,015万円(負担率32%)
額面2,000万円 → 手取り1,291万円(負担率35%)
額面3,000万円 → 手取り1,772万円(負担率41%)
額面5,000万円 → 手取り2,721万円(負担率46%)
額面7,000万円 → 手取り3,599万円(負担率49%)
額面1億円 → 手取り4,917万円(負担率51%)
⇒額面年収が1億円あっても、税金・社会保険料を差し引いた後の手取りは、額面の半分以下の約4,900万円になってしまいます。
税金・社会保険料の負担は、非常に重いですね。
⇒繰り返しますが、上場企業の全取締役の3%しか、年収1億円以上にはなれません。
そして、そのレアケースの年収1億円をもらったとしても、税金・社会保険料で半分以上を差し引かれて、手元に残るのは額面の約半分です。
そもそも、企業の社員の中で取締役になること自体が困難です。実力プラス運も必要だとされています。
やっとなれた取締役の中でも3%の人しか年収1億円以上はもらえず、各社の社長も含めて大多数97%の取締役は年収数千万円くらいと推定されます。
ある上場企業の社長が年収7千万円だとしたら、平の取締役は年収2千万円、部長クラスだと1,500万円くらいではないでしょうか。
なお、年収2千万円以上のサラリーマンは確定申告が必要になるため、年末調整の時期の社内での会話などで、上の役職の人の年収がなんとなく推測できたりします(笑)
本業(サラリーマン)に全集中した場合の可能性
以上を踏まえて、自分が本業(サラリーマン)に全集中した場合、どのくらいの金銭的リターンを得られる可能性があるか、どのくらいが自分の稼ぎの天井になるのか、あらかじめ考えておくと良いと思います。
なお、仕事のやりがいや社会的地位への欲求などは、個人差がありますので、ここでは、あくまで金銭面についてのみ考えます。
全てがうまくいって、社長になれると想定してもよいのですが、予算作成と同じで、収益の額は厳しめに見ておいた方がよいので、部長クラスになれると想定してみます。
上場企業の中でも、トップ級の企業は総じて社員の年収も高めですが、中堅どころの上場企業の場合、部長クラスだと年収1,500万円程度が相場ではないかと推定されます。
(外資系や高額の歩合制報酬などの企業ではなく、通常の日本型の企業を想定)
海外子会社の社長など海外駐在員はより高額になりますが、通常は3年から長くても5年程度で国内に戻って来ますし、定年まで国内勤務だけの人の方が多数派です。
よって、中堅上場企業で、国内の部長クラスを想定し、年収1,500万円と考えます。
年収1,500万円の源泉徴収後の手取りは1,015万円です。
なお、この金額は上場企業を想定していますので、非上場企業・中小企業の場合は、より低い額になると想定されます。
手取り1,015万円は多いと言えば多いですが、上場企業の部長クラスならば、業務終了後も休日も仕事について絶えず考えを巡らし、何かあれば休日でも仕事の対応をすることも珍しくありません。
そうでなければ、社外のライバル他社との競争のみならず、社内の出世競争からも脱落してしまうからです。
勘違いされがちですが、役職が上がれば上がるほど、偉くなればなるほど、業務は多忙を極めます。
一言で言えば、激務です。
この点を考えると、手取り1,015万円は少ないとも思えてきます。
また、ここから必要な生活費を差し引かなければなりません。
部長クラスであれば、それなりの住居費・衣服費・交際費・教育費などがかかってきます。
手取り1,015万円=月額84万円です。
例えば、住居費20万円、水道光熱費4万円、食費15万円、子ども2人の私立の学費が月額20万円、交際費10万円だとしたら、これだけで合計月額69万円なので、残り月額15万円です。
残りから、スマホ代や衣服費、レジャー費、家族の小遣い、臨時の出費費用などを出すことになります。
生活費を差し引いた後に、いくらくらい残るでしょうか。年間1~2百万円くらい?
この手取り年収の想定に加えて、自分の会社の状況を加味します。
●部長は何年できるのか(部長クラスの報酬は何年間もらえるのか)
→長くても定年前の5年くらいか
●部長になれる確率はどれくらいか
→全従業員のうち部長は何%か。同期入社のうち何人が部長になれるか(2~3名程度?)
→自分の現在の年齢・役職も考慮に入れます。
例えば、現在45才で係長だったとしたら、今後本業に全注力しても部長になれる確率は、普通はほぼゼロでしょう。
部長になれない分、想定年収も低くなります。転職や起業なども考慮すべきかもしれません。
⇒これらを総合的に考慮した上で、自分が本業で最大どれくらいの手取り年収を稼げるのかを想定し、投資:本業の注力比率について、自分の労力と時間をどう配分するか考えてみると良いと思います。
r>g の考え方
『r>g』
著書「21世紀の資本」の中で、フランスの経済学者トマ・ピケティが提唱した有名な式。rは資本収益率、gは経済成長率を指します。
「r>g」の不等式が意味するのは、資産 (資本) によって得られる富、つまり資産運用で得られる富は、労働で得られる富よりも成長が早いということです。
資産を持っている人はより裕福になり、労働でしか富を得られない人は相対的にいつまでも裕福になれないことを意味しています。
簡単に言うと、資産運用や投資の方が、労働で稼ぐよりも、効率的で割がいいのです。
したがって、裕福になりたいのであれば、「g」の労働者側を抜け出して、「r」の資本家側(起業オーナー、投資家)に行くべきという理論になります。
⇒この「r>g」の考え方は、投資:本業の注力比率について、自分の労力・時間をどのように配分するかを考えるにあたって、非常に参考になると思います。
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まとめ
上記の役員報酬や給料の話は一部推定も含みますので、うちの会社は違うよ・もっと多いよ少ないよ、とかは当然あると思います。
あくまでも、まあ大体こんなもんじゃないかという提示です。
【本業で得られる収入について】
・上場企業の取締役になれる確率はかなり低い。
・実力プラス運も味方して、厳しい競争を勝ち抜き、取締役になったとしても、年収1億円以上になれる取締役は、上場企業の全取締役の推定3%しかいない。
・つまり、たとえ上場企業のトップ・社長でも、ほとんどの会社では年収1億円以下。
・もし中堅上場企業の部長クラスになれたら、年収1,500万円くらいか。
・ただし、部長クラスになれる確率も数%程度。
・年収1,500万円でも、税金・社会保険料を差し引いた手取りは1,015万円。
必要な生活費を差し引けば、残るお金は年間1~2百万円くらい?
・部長クラスの業務内容は、通常は激務。自分の労力と時間を相当程度、投入しなければならない。
・部長をやれる期間は数年から5年程度?
【投資で得られる収入について】
・「r>g」の理論に基づけば、資産運用で得られる富は、労働で得られる富よりも成長が早い。
・上記で想定したように、部長クラスの報酬で残るお金が年間1~2百万円程度だとすれば、その分を投資で稼ぐことは十分可能。
⇒単純に、金銭面だけで見れば、激務や自由時間が減少することを考えれば、本業への全集中はコストパフォーマンスが悪そうです。
⇒本業だけでなく、投資にも力を入れた方が効率的です。
⇒ただし、これはあくまで金銭面だけで見た話なので、仕事のやりがいや社会的地位などの価値観を重視される場合は、本業に自分の労力と時間を、重点的に投入すべきだと思います。
頑張ってもこれくらいの報酬しかないのかと思うのか、いや報酬額は十分だ・報酬以外の点も重要だし満足してると思うのか、といった価値観の違いです。
そして、ここで強調しておきたいのは、投資だけでもなく、本業だけでもなく、投資と本業と両方やれば良いということです。
学校を卒業して、新入社員から20代・30代の若手の時は、本業に真剣に注力して、役職と給料を上げる。同時並行で投資もしておくことで、複利効果を長期間受ける。
40代になって、自分の会社人生の終点・天井が見えてきたら、投資と自分の時間重視にシフトしていく(転職や起業も検討)。または、部長や役員のイスが見えてるなら、激務を承知で本業を頑張る。
こういった感じでいけば、どっちに転んでも幸せになれそうな気がします(笑)
最悪なのは、労力と時間をかけて本業一本に全集中で頑張ったけど、部長にもなれず、老後のお金もないみたいなパターンです。
自分が本業で最大どれくらいの手取り年収を稼げるのかを試算した上で、投資:本業の注力比率を自分はどうすべきか、一度考えてみることはおススメです。
今日も配当生活への道を一歩ずつ進む、ショウでした!
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