※本記事は、2023年版に更新しました。下記ご参照ください。
1605INPEXは、高配当株の一つであり、私も現在保有しています。
INPEXは、もともと国際石油開発帝石という社名でしたが、2021年4月1日付で、現在の社名に変更しました。
本ブログに書きました、高配当株買いの4つの基準に照らして、INPEXを検討します。
基準1.配当利回りが3%以上(税引前)
INPEXの予想配当利回りは約4.7%の高さ。基準1はクリアです。
基準2.直近5年以上、増配傾向が続いていること(最低でも前年の配当金額を維持していること)
INPEXの配当金の推移
2019年3月期:24円(前年比33%増)
2019年12月期:30円(前年比25%増)※決算期変更のため9か月決算
2020年12月期:24円(前年比20%マイナス)
2021年12月期:48円(前年比2倍)
2022年12月期:62円(前年比29%増)
2023年12月期予想:64円(前年比3%増)
INPEXは、直近5年で大きな流れとしては増配傾向にありますが、20/12期は原油価格の下落や減損損失計上により、減配しています。
上記のように、INPEXは、その原油・天然ガスの開発生産という事業の性質上、原油価格の影響を大きく受けますが、2022年2月9日に以下のような株主還元方針を発表しました。
●INPEXの株主還元方針
「安定的な配当を基本としつつ、業績の成長に応じて、株主還元を強化する」
・総還元性向は40%以上を目途とする。
・事業環境、財務体質、経営状況等を踏まえ、自己株式取得を実施する。
・短期的に事業環境等が悪化した場合でも、1株当たり年間配当金の下限を30円とする。
⇒配当金の下限保証を行う配当方針は、なかなかユニークです。
下限保証は、その年の業績が悪くても、最低でも年間配当30円は支払う。もし業績が良ければ、30円に上乗せして年間配当を40円や50円などにする、ということです。
例えば、INPEXの株式を現時点の株価約1,100円で買ったとします。
すると、下限保証での配当金30円での配当利回りは、年間配当金30円/株価1,100円=2.7% になります。
INPEXは、どんなに少なくても年間配当金は30円を支払うと言っているわけですから、上記の例のように株価1,100円で買った場合、今後取得価格ベースでの配当利回り2.7%以上は保証されることになります。
年間配当の下限の金額=最低でもこれだけは配当をもらえるという金額 を会社が宣言しているので、株主から見れば、ありがたいことです。
ただし、対外的に発表した以上、簡単に変更はしないと考えられますが、上記の配当方針を変更しないかどうか、ウォッチしておく必要はあります。
INPEX経営陣の株主還元・配当への意識は非常に高く、上記を総合的に判断して、基準2もクリアとします。
なお、INPEXは、株主優待として、所有株式数(400株以上)と保有年数(1年以上)に応じて、QUOカード(1,000円~5,000円)の株主への贈呈も実施しています。
詳細はINPEXのHPご参照。
基準3.倒産リスクがほぼ無いと考えられること
INPEXは、売上高1兆円以上、時価総額1兆6千億円以上、日経平均225銘柄の一つであり、倒産リスクは限りなく低いと想定されます。
なお、INPEXは、日本国がその18%を所有する大株主になっていて、国はいわゆる黄金株も所有しています。
株主総会での合併などの一定の重要事項の決議には、持株比率に関係なく、黄金株の所有者の賛成が必要となります。よって、黄金株を所有している国は、重要事項に関する拒否権を有することとなり、INPEXを敵対的買収の対象にするのは非常に困難です。
これは、INPEXが、原油・天然ガスという重要なエネルギーに関する国策会社の側面も持っていることから来ています。
基準4.業績が好調または堅調であること
INPEXは、日本最大の原油・天然ガスの開発企業です。
INPEXは、原油・天然ガスの供給によって、世界のエネルギー需要を満たすとともに、近年の地球温暖化問題・脱炭素社会への移行に対応する事業(ネットゼロ5分野)の育成も進めています。
ネットゼロ5分野は、ネットゼロカーボン社会(二酸化炭素ゼロ)への移行に向けた5つの事業です。
すなわち、①水素・アンモニア事業 ②CCUS事業(二酸化炭素回収・有効利用・貯留) ③再生可能エネルギー事業 ④カーボンリサイクル・新分野事業 ⑤森林保全事業 の5つで、今後の事業成長が期待されています。
原油・天然ガスの開発では、アジア、中東、オセアニア、欧州、アメリカなど世界中の鉱区の取得から探鉱、生産、販売まで行います。
探す→掘る→生産→運ぶ という4つの工程を手がけます。
地質調査、物理探査、掘削、精製、海上輸送・パイプラインなど、様々な専門技術が必要であり、他社が簡単に参入できる事業ではありません。
INPEXの2021年12月期の連結売上高1兆2,400億円の内訳は以下の通りです。
原油 :9,000億円(73%)
天然ガス:3,200億円(26%)
その他 :200億円(1%)
よって、その事業の性質上、INPEXの業績は原油と天然ガスの市況価格に大きな影響を受けます。
この点をカバーするために、業績が一時的に下がった場合でも、株主還元の面では、上記の基準2に記載したように、INPEXは配当金の下限保証を公約しています。
逆に、石油・天然ガスなどの資源価格が大幅に上昇する場合、INPEXは大きな利益を得ることができます。
脱炭素社会の実現が叫ばれる中で、CO2を排出する化石燃料である原油・天然ガスの需要は、将来にわたって少しずつ縮小すると見込まれています。
しかし、原油の用途は、熱源(火力発電所、暖房等)、動力源(自動車、飛行機、船舶等の燃料)、原料(プラスチック、化学繊維等)など、多岐にわたります。
CO2の削減のために、これらの用途に使われている原油を一気になくすことは、技術的にも経済的にも不可能です。
また、天然ガスは、化石燃料の中でもCO2排出量が少なく、環境に優しいエネルギーです。そのため、脱炭素社会への移行期には、天然ガスへの高い需要が見込まれます。
まだまだ、世界的に、原油・天然ガスは必要な状況が続きます。
加えて、上記の通り、INPEXはネットゼロ5分野の事業に注力しており、同社の技術力を応用して、再エネやCCUSなど脱炭素に関する事業への取り組みも積極的に進めています。
2022年5月11日の22/12期第1四半期(1-3月)決算発表と同時に、INPEXは22/12期の業績予想について、上方修正を発表しました。
これは、当初予想していた当期純利益2千億円を3千億円に、+20%上方修正するものですが、22/12期の配当予想については54円のまま、変更しませんでした。
配当に関しては、22/12期の中間決算発表(22年8月)の時点で、業績を踏まえて判断するとのことです。今後の増配に対して、期待が高まります!
⇒その後、2022年8月8日の中間決算発表にて、INPEXは、22/12期の配当予想について、増配修正(54円→60円)を発表しました!
INPEXの業績の数字には、年によりアップダウンがありますが、業界首位の会社として、おおむね業績は堅調で、配当を維持できなくなるほど大きく悪化することはないと考えています。
結 論
以上を総合的に考慮し、高配当株として、INPEXは買いと判断しています。
特に、配当金の下限保証および業績好調時には大きな増配も見込める点と、同社株を保有することで資源価格のインフレに対応できる点が、非常に魅力的です。
(石油・天然ガスの資源価格が上がれば、同社の業績もアップし、同社株価も配当も増える。逆に業績が下がった場合は配当金の下限保証がある)
今日も配当生活への道を一歩ずつ進む、ショウでした!
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